刻苧作業が始まりました【御車山車輪修復】

文化財の修理修復

修理工房では、今朝から漆の「刻苧(こくそ)」作業が始まりました。
刻苧って…なんだか聞きなれない響きです
今日はこの、刻苧についてちょこっと解説。
(当然受け売りですが


刻苧とは…(デジタル大辞泉
木の粉や繊維くずなどを漆にまぜたもの。
漆塗りの素地(きじ)の合わせ目・損傷部などを埋めるために用い、
また乾漆像などの細部の肉付けにも用いる。
↑とあります。
漢字は木屎とも書くらしく、こちらだと「こ+くそ」、
刻苧だと「こく+そ」ですね。
どちらも意味と合致した漢字なので、いったいどちらが元なのでしょう。
さてさて戻りますと、この刻苧とは、漆作業工程のひとつであり、
その工程に使う材料そのもののことも指すようです。
さてその双方が見て分かる写真がこちら↓
埋め木のみ
こちらは車輪周囲の弧の部分、扇材と呼ばれているもののひとつです。
四角い穴が、矢骨の入る部分で、一番右の穴下方の
白っぽい部分2ヶ所が埋め木をした部分になります。
で、写真上方、右手でヘラを持って作業中ですが
ヘラ付近で練られているのが、おがくず等を混ぜた後の刻苧。
その左にある柔らかそうなものが、刻苧を作る前段階、
ご飯をすりつぶした糊と下地漆を混ぜた糊漆。
糊漆は必ず傍に置いておき、おがくず等の混ぜ具合を調整しながら塗っていくのだそうです。
糊漆の段階でずいぶんと練り、刻苧にしてからは固くなるのを
さらに練って練ってして使うのだそうです。
刻苧の配合は、人それぞれに、いろいろあるそう。
ちなみに、固いものを練るために便利なのは、しなりのある竹ヘラがいいのだとか。
埋め木にコクソ
こちらは、実際に刻苧を塗っている=刻苧作業中の写真です。
こうしてしっかり塗りつけて硬化させますが、その過程で収縮するため、
傷などに一度塗っただけでは高さが足りなくなり、
たいがいは二度以上塗って、余分を磨いて平らにするそうです。
木部にまで入り込む傷があったりする場合には、ただ傷を埋めるのではなく
その周りを削りとって傷の深さを確かめ、しっかり塗り込めるとのこと。
でないと内部に傷が残り、中から痛む場合があるそうです。
何層か重なっている漆の部分だけが傷ついている表面的な傷は
表面を均して塗るだけでよいのだそうですが、
胎(木地ほか、漆器を形作るボディの部分です)まで入る傷は
こうしてしっかり修復するそうです。
なんとも緻密な、そして大事な作業ですね。